DX初めの一歩 デジタル社会形成基本法
Ⅰ. わが国におけるDXの定義
DXはDigital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称で、もともとは2004年にスウェーデンの大学教授によって提唱された概念ですが、わが国においては2018年に経済産業省が「DXレポート」を公表したのが始まりです。ここをスタートラインにして、話を進めていきたいと思います。
その内容は、これまでのシステムのままでは、システムが陳腐化してしまい、世界との競争の中で、アメリカや中国に後れを取ることになり、新しい時代に対応できなくなってしまう恐れがあると警鐘を鳴らしています。
そのために早急に対策が必要であり、そのタイムリミットを2025年としたことで「2025年の壁」と呼ばれています。
1.2025年の壁
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション
(=DX)の必要性について理解しているが・・・

2025年の壁について説明するよ
- 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化している。
- 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、社内の理解を得ることがむずかしい。
- 現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっています。
- この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)があります。
2.DXレポート2
「DXレポート2」は、2018年に経産省が発表した「DXレポート」に対し、その後の企業の動向及びコロナ禍の影響等をふまえて、2020年12月にあらためて報告された最新のレポート(中間報告)となっています。

DXレポートには1と2があるの?

「2025年の壁」がDX1だったね。
ここではDX2の説明をするよ
このブログでは、この「DXレポート2」の内容を「IT Leaders」のコラムを引用させていただきました。
経済産業省が2020年12月28日に公表した「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』」で発せられたメッセージは、概ね以下のようなことである。
●コロナ禍でテレワークやネットデリバリー、ハンコの撤廃・省略などデジタルへの認識が高まった
●しかし実態としては、日本企業の95%がデジタルトランスフォーメーション(DX)にまったく取り組んでいない。ないしは取り組み始めた段階にとどまっている
●多くの企業が現状維持を前提としていて、デジタル変革への危機感は低い
これを受けてメディアは、本誌の既報にもあるように、「このままでは日本が負け組に転落する!」と、経産省が抱いている危機感を代弁し、警鐘を鳴らすことになる。
すでに報じているとおり、DXレポート2はDX推進のための体制整備、戦略策定、人材確保など、「DX加速シナリオ」を簡潔にまとめたものだ。ただ、2018年9月公表のDXレポート第1版における、デジタルトランスフォーメーションという言葉の目新しさや、「2025年の崖」のようなキャッチーな副題がなかったので、多くのメディアは取り上げ方に腐心したに違いない。
もう1つ、あまり注目されなかったようだが、経産省は年明けの2021年1月8日に「デジタル市場に関するディスカッションペーパー」を公表している。深化する少子高齢社会を視野に入れて、社会・経済活動における「機能」と「情報」の分離(デカップリング)と再編(リバンドリング)を論じたものだ。それを加速・拡大・拡散するデジタル技術こそが、産業構造や価値観を変革していく、という論旨である。
2018年9月のDXレポート第1版の公表からDX推進ガイドライン、DX推進指標、デジタルガバナンスコード、DX経営銘柄、DX税制、デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)と施策を積み上げている
こうした施策の積み上げを踏まえて、今回のDXレポート2というわけだが、同時に公表されたデジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会WG1の全体報告書からは、「2020年度のDX進捗状況は停滞気味」と判定していることが読み取れる。過去2年の施策が期待したほどの効果を挙げなかったのか、ユーザーサイドが存外にぬるま湯の深みにはまっているのか、その議論はさておき、「より加速するため」の施策の基本指針が「ディスカッションペーパー」、それをIT寄りに再編集したのがDXレポート2とすれば、理論武装が完了したことになる。いよいよ本格化に向けた弾込め、そして打ち出しというわけだ。
「DXレポート2」に書かれなかったこと─経産省の真意を深読みする
3.デジタル社会形成基本法
「デジタル社会形成基本法」は2021年2月9日に閣議決定され、同年9月1日に施行されました。

「デジタル社会形成基本法」ってなんだか難しそうね!

DXを理解する初めの一歩なので、頑張ってついてきてね。
◆基本理念
デジタル社会の形成に関し、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現(第5条)、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現(第7条)、利用の機会等の格差の是正(第8条)、個人および法人の権利利益の保護(第10条)等を基本理念とすることを定めていて。
具体的には、国民目線での「誰一人取り残さないデジタル化」「人に優しいデジタル化」などが志向されています。
◆国および地方公共団体の責務
国および地方公共団体にデジタル社会の形成に関する施策を策定し実施する責務を課している(第13条、第14条)。地方公共団体には地域の特性を活かした施策の策定・実施が求められている(第14条)。また、これらの施策が迅速かつ重点的に実施されるよう、国と地方公共団体は相互に連携することが求められる(第15条)。
◆事業者の責務
事業者に対し、本法の定める基本理念に則って、その事業活動に関し、自ら積極的にデジタル社会の形成の推進に努めるとともに、国または地方公共団体が実施するデジタル社会の形成に関する施策に協力する努力義務を課している(第16条)。
◆高度情報通信ネットワーク社会形成基本法の廃止
この法案で私が最も注目しているところが、平成12年に制定された「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」を廃止するという法案です、しかもこれは本文ではなく「附則抄」に書かれているので、ほとんどの人は見逃していると思いますが、ここに大きな秘密が隠されているのです。

いわゆる「IT基本法」と呼ばれる、これまでのIT戦略の根本原理を一度ちゃらにして、新しい根本原理を作り変えるよ と言っているのが「デジタル社会形成基本法」なんだ
Ⅱ. 今までの法案と何が違うの
我が国のIT戦略は次に説明するように、ハードウエアを中心に整備され、次にITの利活用、データの利活用、デジタルガバメントの実現、社会全体のデジタル化へとつながり、今回「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」実現し人中心の戦略となったところがこれまでの法案と異なる点です。
1.平成12年「IT基本法」から始まった
森喜朗政権時代の2000年に設けた「IT戦略会議」で「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」いわるゆ「IT基本法」が11月に制定、2001年1月に施行されました。
これが日本のIT戦略の始まりとなり、立て続けに下記のような戦略が立てられました。
- 平成13年「e-Japan戦略」:超高速ネットワークインフラの整備
- 平成15年「e-Japan戦略Ⅱ」:IT利活用の推進
- 平成25年 世界最先端IT国家創造宣言:政府自身の改革(CIOの設置)
- 平成28年 官民データ基本法:データ利活用を通じた社会課題の解決
- 令和元年 デジタル手続法:行政手続きのデジタル化を実現
- 令和3年 デジタル社会形成基本法:コロナ後のニューノーマルに対応したIT新戦略

2. 平成20年のある事件
平成20年7月、住民基本台帳法の住基ネットによる個人情報の管理・利用等はプライバシー権を侵害するとして、東京、神奈川、千葉など全国13地裁で、総計450人に上る原告団が、財団法人地方自治情報センターを相手取って、訴訟を起こしたものです。原告側は住民基本台帳を保管する市に対し、原告の住民票コードの削除を求めました。総務省資料より、これに対する争点は、個人のプライバシー侵害と公共の利益との「比較衡量論」で争われ、その結果、最高裁判所の下した判決は住基ネットに合理的な必要性と、目的の正当性を認めました。
しかしこのような経緯から、住基ネットの普及率は、現在5%にみたず、(平成28年1月からマイナンバーカードが発行開始されたことに伴い、住基カードの発行は平成27年12月で終了しています)更に、その後のシステム開発では、プライバシー保護を優先したため、システム間連携は、しないことを前提に開発される事となったのです。
Ⅲ. コロナ禍でドタバタが続く
1. 特別定額給付金でトラブル続出
マイナンバーカードとマイナポータルの「ぴったりサービス」を使って2020年5月1日に始まったオンライン申請は、申請者による氏名や住所などの誤入力や二重申請が相次いだ結果、自治体が持つ 住民情報との照合に多大な手間がかかり、あちこちでトラブルが続出しました。
総務省は2020年6月2日、同月1日までに43自治体がオンライン申請の受け付けを停止したと明らかにしました。サービス開始からわずか1ヶ月足らずで、このような事になってしまいました。その原因は下記の通りです。
• 今回のオンライン申請に使われたマイナポータルの「ぴったりサー ビス」はログイン不要のWebフォームであり、そもそも自治体のシステムから4情報を取り出す機能は全く想定されていない。
• これはマイナンバー制度を運用するシステムが、2008年3月6日のいわゆる「住基ネット最高裁判決」を踏まえて設計されていること に起因する。
• この判決の後に設計され2015年に運用が始まったマイナンバー関連のネットワークシステムは、この判決を元に「個人情報の一元 的な管理」を徹底的に避ける仕様となった
2. 世界最先端の医療体制が崩壊した
病床逼迫(ひっぱく)。世界からみれば感染者数や死亡者 数は少ない。国民皆保険制度が導入されていて、国民も清潔感にあふれている。それなのになぜ医療が逼迫する のか。
• コロナ病棟の人材が足りませんと言っても、平時のお願いベースでは、余裕があるわけではないから人が集まらない。大学の病院長だけで問題解決するのは無理です。国がバックアップしながら、ほかのところから人を集めてくるという有事対応ができないから、医療逼迫があってもフォ ローできない。
• 政府が東京と大阪に設置した新型コロナウイルスワクチ ンの「自衛隊大規模接種センター」で24日、接種が始まった。防衛省によると、初日は計7500人が対象だったが、目立った混乱はなかったという。つまり自衛隊は常に有事対応の中で仕事をしているので、こうした対応が取れたのではないかと専門家は分析しています。
3. 世界トップクラスの医薬品業界なのにワクチンが作れない
• 日本には立派な製薬会社があって医療開発も進んでいる にもかかわらず、国産ワクチンができていない。承認されるには治験がいる。治験には何千人かの協力が必要で、開発したワクチンが効くのか、偽薬を用いて協力者に言わずに、比較して効果があるということで承認される。平時で は3年も4年もかかる。それでは間に合わない
• イギリスを皮切りにアメリカ、EU諸国、イスラエル、アジアでは中国、シンガポール、ネパール、ミャンマーなど、世界各国で次々と新型コロナウイルスのワクチンが承認されて いる。そんな中、イギリスでの開始から2ヵ月経っても、未だに日本だけがG7の中で唯一「承認すらされていない」
• 菅首相は5月2日、国内での接種開始を前倒しして今月中旬を目指す考えを示した。遅れにはさまざまな事情がある にせよ、世界に「大きく出遅れた」感は否めない
4. 事例に共通した原因
• 日本の行政は平時対応の体制で出来上がっているので、非常事態が発生したときに制度が障害となり、対応できない。
• 救急車も消防車も平時は交通ルールを守って走行するが、緊急時には信号無視が許される。
• 1990年代以降、つまりソ連が崩壊したあと新しい国ができたりして世界が大きく変わった。このわずか三十数年で104カ国が憲法を新たに制定している。すべての国に緊急事態条項が入っている。ないのは日本だけだ。
Ⅳ.平常時に強く非常事態に弱い体制からの脱却
- デジタル社会形成基本法とは、平時だけではなく、非常事態時におけるIT利活用を想定した法案である。
- 2000年の「IT基本法」~2021年までのIT政策を、いかに非常事態で機能させることができるかが問われている。
- できなければ、元の木阿弥、今回の「デジタル社会形成基本法」もザル法になってしまうかも。
1.日本版CDC”司令塔機能強化へ
政府は、2022年6月17日総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、内閣官房に「内閣感染症危機管理庁」を設置することや、アメリカのCDC=疾病対策センターの日本版を創設することなどを盛り込んだ感染症対応の抜本的な強化策を決定しました。
さらに、必要な医療提供体制を確保するために国と地方が病床の確保などでより強い権限を持てるよう法整備を行うほか、地域の拠点病院に都道府県と協定を締結する義務を課すことなども盛り込んでいます。
2.ワクチン開発・生産体制強化戦略
ワクチンを国内で開発・生産するための長期継続的に取り組む国家戦略として「ワクチン開発・生産体制強化戦略」が策定されたました。(令和3年6月1日付け閣議決定)
本事業では、今後の変異株や新たな感染症への備えとして、平時は企業のニーズに応じたバイオ医薬品を製造し、有事にはワクチン製造へ切り替えられるデュアルユース設備を確保します。さらに、ワクチン製造に不可欠な製剤化・充填設備や、医薬品製造に必要な部素材等の製造設備への支援を行います。
3.半導体産業政策の大転換
「失われた30年の反省と足元の地政学的変化を踏まえ大きく政策転換を図る。半導体は今後のグリーンデジタル、自動車への応用を含めて重要になってくる。研究開発と国内製造基盤を強化していかないといけない」
経済産業省は6月4日、「半導体・デジタル産業戦略」を発表しました。目玉となる半導体産業の強化について、梶山弘志経産相は国を挙げて取り組む姿勢を示しました。同戦略では、「産業政策の新機軸」をうたい文句に、大規模な財政支出にも意欲を示しています。
呼応するかのように、その直前、自民党は5月21日に「半導体戦略推進議員連盟」を立ち上げました。会長に甘利明・党税制調査会長、最高顧問に安倍晋三前首相(2022年7月8日安部元首相が銃撃され死亡するという衝撃的な事件が発生しました、安部元首相のご冥福をお祈りいたします Wikipediaより)と麻生太郎財務相が並ぶ布陣で、政府による「前例のない異次元の支援」を求める決議を行いました。

決議の中で、安部元首相は「われわれの目標は、半導体の国内基盤を取り戻すこと。この大きな目標に向けて、必要な対策はどんどん打っていきます。」と言いました。
約8000億円という予算額は第1弾に過ぎません。30年には3倍の額にするくらいの勢いが必要です。3倍といっても、半導体需要から考えればわずかです。30年には世界の半導体売上高が、現状の2倍となる約120兆円になる見込みだからです。
経済安全保障などの観点から、世界中で技術関係の摩擦が激しくなっています。製品をどこで作ってもよかった従来の状況から、「どこで作られているか」が重要になってきているわけです。そんな中で、経済安全保障上重要である半導体技術や製造拠点が国内になければならないのでは、という話が進んでいます。
2021年10月、半導体を受託生産するファウンドリーの世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、日本に初めて工場を建設すると発表した。その裏では、日本政府と同社の2年近くにわたる厳しい交渉があった。
日本政府がTSMCの誘致にこだわった理由は何か。世界政治を左右する戦略物資となった半導体を巡って各国が激しく争う最前線を、30年以上にわたって国際報道に携わってきた太田泰彦氏(日本経済新聞編集委員)の著書、『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』(日本経済新聞出版)から一部を抜粋、再編集して解説する(敬称略、肩書は執筆当時のもの)。
太田 泰彦
日本経済新聞編集委員


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